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「トイレに貼った子犬の写真」
昨日のコラムで、過去に2回死にかけたというお話をしました。今は元気に暮らしていますが、最悪だった時期・・・まったく回復の兆しが見えずにいた時は、まるで夜の広大な砂漠をさまよっているような精神状態でした。
生きる気力を失っていたので、「〜したい」というような“望み”は何もありませんでしたし、食欲のような最も本能に近い欲求さえも薄れていました。
大好きな本さえ手にとる気力もなく、何を見ても何も感じない、心が動かない・・そんな状況でした。そうやって感覚のスイッチを切って、苦しみから逃れようとしていたのかも知れません。
しかしそれは、生きながらにして死んでいるのも同前で、もしかしたら身体の奥で微かに働いているかもしれない自然治癒力さえも、完全に封じ込めてしまうような悲しい悪循環を生んでいたに違いありません。
頭では、もっと前向きにがんばらなければ“回復”も望めないと分かっていました。けれど、そう思えば思うほど空回りするばかりだったのです。
苦境に立つ人に、あーした方がいい、こうすればより良くなると、示唆を与えようとする本は巷に溢れています。例えば「ポジティブ シンキング」に関する本。前向きな思考は、建設的な結果を生む・・・まったくその通りだと思います。けれど、ポジティブになること自体が困難な時もあるのです。じゃあどうすればいいのか? 真の苦境に立つ時、このての本が救いになるとは、いまだにどうしても思えません。
そんな最悪な状況だったあるとき、写真好きな弟が、一枚の子犬の写真を、なんの気なしにに見せてくれました。本当になんでもない子犬の写真です・・・それを見てとっさに「なんてかわいいんだろう」と感じました。そして、自分の心が動いたことに驚きました。ああ、私の心もまだ動くんだと・・・
私はその写真をもらって、トイレに貼ることにしました。トイレだけは自力でいっていましたし、横になれずベットに入らない日もあったからです。その写真を見るたびにちょっとだけ心が動く、そんな自分自身の心の動きが、救いになりました。真っ暗な砂漠の真ん中で、小さなろうそくの灯を見つけたような感じです。その小さな灯を消してしまわないように、細心の注意を払いました。その時の私には、他に何もなかったのです。大袈裟に聞こえるかも知れませんが、事実です。
そのことを切っ掛けに、ほんの微かでも、心が無条件に、明るい方へ、暖かな方へと動くものに目ざとくなりました。本当に本当にささやかなものでいいのです。それが無条件に心に響くものであるなら・・
その後トイレの壁は、子犬の写真だけでなく、新聞の切り抜きや、スナップ写真やら何やらで、いっぱいになりました。それに伴って、少しずつ回復の兆しが見え始め、ベットに横になれるようになってからは、小さなベアや、絵本や、花や・・・いろんなものを部屋に置くようになりました。実をいうとそれまでの私は、昔から引っ越しばかりしていたこともあって、モノを持つこと自体が好きではなかったのですが・・・
真っ暗な砂漠の真ん中で、小さなろうそくの灯はなんともたよりなく、命の危機を感じてさまよう遭難者なら、それを見つけて「これで助かった!」なんて思うはずもありません。けれど、広大な闇に囲まれて、その灯を無視することもできないはずです。いつ消えてしまうか分からないような小さな灯でも、たくさん集めると、それなりに大きな光になります。
絵本でも、音楽でも、誰かとの出会いや、花を見て綺麗だなと思う感覚や、誰かの素敵な言葉や、 なんだかいいなーと思う出来事でも・・・とにかく無条件に、暖かい気持ち、やさしい気持ち、元気な気持ちにさせてくれるものはどんなものでも、この小さなろうそくの灯だと私は思っています。
ひとつひとつは他愛もなく、命の危機が迫る遭難者を救えるものではありません。けれど、大きな闇の中でそれは心のよりどころになり、生きる力を与えてくれるのです。
私はひ弱な人間なので、すぐに疲れるし、へこたれるし、落ち込みます(笑)・・・だからどうしても必要なんです、そういうものが。こんなサイトをやっているのも、私自身がより多くの、本という灯との出会いを欲しているからだろうと思います。
右上に表紙写真を掲載している本はどちらも「決定的な笑いの瞬間」ばかりを集めた写真集です。子供と一緒に見るもよし、一人で楽しむのもよし、「自分が今、暗闇をさまよっている」と感じているなら、何も考えずに見ただけで笑えるこんな本もお薦めです
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Life
Smiles Back
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Laughs Last
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